(具体的事例2)
 平凡なサラリーマンである上田氏(男性・35歳)は、先日、古くからの友人A(男性・35歳)に、突然、50万円の借金を頼まれました。

 話を聞くと、昔から株の取引が大好きな友人Aは、絶対儲かる株があるから、株購入の200万円の資金が必要であり、その資金の一部を上田氏に貸してもらいたいということでした。

 株取引など今まで無縁であった上田氏は、熱心に語り続ける友人Aの話を、半ばうわの空で聞きながら、「どうやって借金の申し出を断ろうか。」と考えていました。

 しかし友人Aの「儲かったら、すぐ株を売却して、50万円の20パーセントの利息をつけて返すよ。もし、儲からなかったとしても、株はすぐ売却して、元本の50万円と2万円の利息をつけて返すから。」という言葉に、少し心が揺らぎ、結局2ヶ月だけという約束で、50万円のお金を貸してしまいました。もちろん、簡単な借用書は作成してもらいました。

 2ヵ月後、友人Aに連絡を取ると、「今は、値が下がってしまったので、売却するのは損だから、もう2ヶ月だけ待ってくれ。」と、頼み込まれました。

 話が違うと友人Aに詰め寄った上田氏ですが、その場は説得され、「とりあえずもう1ヵ月だけ待ってくれ。必ず返すから」という友人の言葉を信じて電話を切りました。

 その後、すごく不安に駆られた上田氏は、インターネットで、友人が買った株の評価を見て愕然としました。その株価は、200万円の半分以下の価値しかなかったのです。

 一応約束どおり、1ヵ月は我慢した上田氏ですが、友人の話が、前回と同じ「待ってくれ」との一点張りだったことで心が決まりました。「これは、何らかの手段をとらないと、いけないな」と。

 そして、最初は、「弁護士さんに相談するしかない。」と、思い込んでいた上田氏ですが、インターネットや本で、いろいろと調べるうちに、内容証明郵便というものがあることに気がつきました

 上田氏は、大学で法律を専攻していたこともあり、「そういえば講義で習ったことがあったような気がする。友人宛てに出すのは忍びないが、彼のためにも、思い切って内容証明郵便というものを作ってみるか。」と、数冊の本を本屋で購入し、本に書いてあるとおりに内容証明郵便を友人A宛て、送付しました。

 数日後、内容証明郵便を受け取ったA氏は、とてもびっくりするとともに、友人である上田氏にとても悪いことをしていたことに、初めて気がつきました。

 A氏も決してお金を返さないつもりではなかったのです。しかし、友人であることで甘えていたのでした。

 数日中にに、株を売却したA氏は、そのお金で、当初約束どおり、50万円に2万円の利息をつけ、上田氏に返済し、自分が甘えていたことをわびました。

 上田氏は、こんなに早く効果があったことに驚くとともに、A氏との友人関係が崩れなかったことに、「内容証明郵便を出して、正解だったな。」と、安堵の笑みを浮かべました。

解説:
 これは、内容証明郵便が見事成功した事例ですが、内容証明郵便には、このように受け取った相手方に、はっとさせたり、ショックを与える効果があります。

 これが、内容証明の心理的効果です。これは私見ですが、このような何らかの債務の履行を請求される相手(この事例の場合はA氏)は、基本的に、相手方(この事例の場合は、上田氏)をなめているか相手方に甘えていることが多いと思うのです。

 ですから、相手方からの予期せぬ反撃が、予想以上に効果を示すと推測します。もちろん、これは最初に述べたとおり、内容証明郵便の送付が、見事に成功した事例であり、失敗に終わるケースも少なくありません

 特に、取引相手等に送付する場合は、相手の心情を十分考慮し、今後の付き合い方も鑑みた上で、内容証明郵便を送付するかどうか決定したほうが無難だと思います。

閉じる
Copyright(C) 2005-2007 Kuraguchi Office. All Rights Reserved.