(具体的事例1)
 会社員の田中氏(男性・28歳)は、先日電話で、ある資格の通信教育の勧誘を受けました。その手の勧誘は、何度も受けている田中氏は、いつものように断ろうと思っていました。

 しかし、たまたまその2〜3日前に、これからは資格が必要であるという本を読んだばかりであり、将来のことも考え始めていたので、「まあ、話しぐらいは聞いてもいいかな」と思い、会社のそばの喫茶店でその勧誘員A子と会う約束をしました。

 その勧誘員が女性であったことも若い田中氏にとって、少なからず影響がありました。

 待ち合わせの時間に現れた勧誘員A子は、電話で話したイメージ以上に誠実かつ和やかな雰囲気を持ち、風貌も田中氏の好みでありました。

 そのA子に、熱心に教材の説明された田中氏は、最初は高いと思っていた35万円の教材費も、説明を受けるに従って、「買ってもいいかな」と思い始めてきました。

 「ローンなら月々1万5千円の負担ですみますよ。」というA子の言葉が決めてとなり、とうとう契約をしてしまいました。

 その場は、満足して帰った田中氏ですが、翌日会社の同僚B男にその話をすると、「それは、ちょっと高いんじゃない。今ならクーリングオフでキャンセルすることができるよ。」とアドバイスを受けました。

 値段がちょっと気になっていた田中氏は、だんだんと高い通信教育に申し込んだことを後悔し始め、結局、同僚B男のアドバイスどおり、キャンセルすることに決め、即日中にキャンセルする旨の手紙を、通信教育のC社宛て送りました

 手紙を出し、安心しききった田中氏は、そのことは、すっかり忘れていつものように過ごし始めました。

 それから1週間後、C社から第1回目の教材が支払い請求書とともに届きました。「何かの間違いだろ。」と思った田中氏でありましたが、何かいやな予感が頭をよぎり、すぐにC社に電話で連絡を取りました。

 電話に出たC社の担当者D男に事情を説明すると、「失礼ですが、そのような手紙は、我が社は、受けとっておりませんが。」と冷たく言われ、「第1回目の支払いを期日どおりに支払って下さい」と逆に念を押されました。。

 最初の言葉で、頭がガーンと殴られたような気がした田中氏は、気を取り直して、その後も一生懸命説明しましたが、手紙を受け取っていないと言う担当者D男とは話が平行線で、疲れてきた田中氏は、一旦電話を切ることにしました。

 電話を切った田中氏は、自分の失敗に気づきました。手紙を出しただけで安心した田中氏は、もちろん手紙のコピーもとっておらず、相手のC社に手紙を受け取っていないといわれたら、それを証明することができないことに気がついたのです。

 弁護士や消費者センターに相談することも一時は考えたのですが、もともと争いごとの嫌いな性格でもあり、最初は買うつもりであったことも思い出し、結局そのまま、通信教育を受けることにしてしまいました。

解説:
 もう皆さんお気づきだと思いますが、田中氏は、内容証明郵便を出せばよかったのです。

 この事例で、田中氏がC社を相手に訴訟を起こし争うことは、可能であります。また、ローンであるため、途中で解約も出来ます。

 しかし、最初に、内容証明郵便を送っていれば、少なくともこのような事態は避けられたのです。田中氏のように争いごとの嫌いな性格の人は、このような経験が多かれ少なかれあるのではないでしょうか

 この事例1のようなことは、誰にでも起こりうることだと思います。まさに内容証明郵便であったら未然に防げていた、つまり、内容証明郵便でなかったことにより失敗した事例といえるでしょう。

閉じる
Copyright(C) 2005 -2007Kuraguchi Office. All Rights Reserved.